研究_宮崎県の集落巡礼

5月3日・4日で宮崎県のまちなみ・集落を巡りました。
宮崎県南部日南市中央部にある「飫肥(おび)」は、江戸時代の武家屋敷町、町人町、寺町などの
町並みが多く残され、重要伝統的建造物保存地区に指定されています。まちなみはいわゆる「城下
町」として美しく落ち着いた佇まいですが、なんといっても町あるきの手法が大変面白く楽しめま
した。まず観光案内所で「食べあるき・町あるき」MAPを購入し、城下町を散策しながらMAP
に付いたチケットで提携しているお店の食べ物やお土産と交換できる仕組みで、特色のある地元食
を食べあるきしながら散策もできるという画期的なものでした。
飫肥名物の卵の厚焼きやおび天などとてもおいしく各店舗の個性を感じることができました。
施設入場と食べ物を交換できるチケットを販売するだけの観光手法なのですが、1チケット100
円以下なので各店舗の前向きな協力があってはじめて成り立つシステムでありかつ、名物の比較的
多い当地域だから成立しているのではと感じました。

宮崎県中北部、日向市南部にある「美々津(みみつ」は、九州山地の椎葉を源流とする耳川の河口
南岸に形成された古い港町で、現在も当時の建物、敷地割が残っており重要伝統的建造物保存地区
に指定されています。美々津千軒と言われるほどの規模を誇っていたとされ、海岸線に沿った3本
の通り、上町、中町、下町に展開しており、海と反対側の丘に寺社、墓地が配置されています。港
から傾斜する通りが創り出す微地形ならではの景観が美しく、整備された古い建物のファサード
統一感があり、ポストのデザインも統一していてとても好感が持てました。
民俗資料館に展示されていた「町並模型」が秀逸で、九州共立大の先生を中心に18世紀以前のま
ちなみを復元した模型です。失われた集落の復元という私の研究にも大変参考になるものでした。
この一連の復元過程を記した報告書があれば手に入れたいと思います。

宮崎県内陸部の九州山地に位置する「椎葉(しいば)」は、山岳集落であり椎葉は耳川の上流域一
帯を指す地域称で、今回訪れた村は十根川集落は、は石垣で宅地を段々に形成し、等高線に沿って
民家が一列に配置しています。当地域も重要伝統的建造物保存地区に指定されています。
雛壇のように黒石が見事に積み上げられた山岳集落は、どこまでが敷地内の庭でどこからか公共の
通路かが全くわかりません。まずは大きな公共の道路が階段になり、昇ると民家の庭に入ります。
庭を抜けるとまた公共(らしき)階段・通路が出現し、混乱してしまいます。
切り立った傾斜地を極限まで使い切った結果、公と私が一体化したのだと想像します。かつて沖縄
の中世村落が通路のない細胞のような集落だったとされていますが、それはあくまで血縁関係の集
合体であったとされています。一方、椎葉村はおそらく一族のみの集落ではないため、公共スペース
と私有地の融合は集落形成において特異な構成であると言えます。地籍図や土地台帳などを入手して
詳細に調査したいと思いましたが、同行していた私の奥様が飽きてご機嫌ななめになり始めましたの
で、2日間のまちなみ・集落巡りを終えることとしました。


椎葉に向かう途中で見つけた川沿いの美しい集落。